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1.5.1 可逆サイクルの効率

ここでは可逆サイクルの効率(仕事と熱の比)はどんな可逆サイクルでも常に等しくなることを示す。 可逆サイクルAと可逆サイクルBを並べて同じ二つの熱源間で動作させる。可逆サイクルAの熱機関としての効率 $ \epsilon_{E, A}$ が、可逆サイクルBの熱機関としての効率 $ \epsilon_{E, B}$ よりも高いと仮定する(図1.16-1)。

$\displaystyle \epsilon_{E, A} > \epsilon_{E, B}$ (1.15)

効率の高い可逆サイクルAを熱機関として、可逆サイクルBをヒートポンプとして、仕事の大きさが同じになるように動作させ1.15(図1.16-2)、熱機関で取り出した仕事でヒートポンプを動作させる(図1.16-3)。
図 1.16: 可逆サイクルの比較
\includegraphics[width=150mm]{figures/HeatEnginePumpRevAandRevB.eps}
式(1.12)と式(1.15)から

$\displaystyle \frac{ \vert W_A \vert }{ \vert Q_{A, H} \vert } > \frac{ \vert W_B \vert }{ \vert Q_{B, H} \vert }
$

ここで仕事が同じとなるように動作させているので $ \vert W_A \vert = \vert W_B \vert $ となり、次式が成り立つ。

$\displaystyle \vert Q_{A, H} \vert < \vert Q_{B, H} \vert$ (1.16)

上式とサイクルにおけるエネルギー保存の式(1.11)(p. [*])と式(1.13)(p. [*])より、

$\displaystyle \vert Q_{A, L} \vert + \vert W_A \vert < \vert Q_{B, L} \vert + \vert W_B \vert
$

仕事の大きさが同じになるように動作させている( $ \vert W_A \vert = \vert W_B \vert $ )ので、次式の関係となる。

$\displaystyle \vert Q_{A, L} \vert$ $\displaystyle < \vert Q_{B, L} \vert$ (1.17)

この可逆サイクルである熱機関Aと可逆サイクルであるヒートポンプBでは、仕事は熱機関AからヒートポンプBへするため、周囲との仕事のやりとりはない。そのため図1.16-4のようにまとめて一つのサイクルとして考えることができる。高温熱源では、式(1.16)より $ \vert Q_{B, H} \vert - \vert Q_{A, H} \vert > 0 $ となり、ヒートポンプとして動作している可逆サイクルBの熱$ Q_{B, H}$ が大きく、まとめたサイクルから高温熱源へ熱を伝えている。低温熱源では、式(1.17)より $ \vert Q_{B, L} \vert - \vert Q_{A, L} \vert > 0 $ となり、ヒートポンプとして動作している可逆サイクルBの熱$ Q_{B, L}$ が大きく、まとめたサイクルで低温熱源から熱を受け取っている。このように、二つのサイクルを合わせた全体で見ると、低温熱源から熱を受けとり、高温熱源へ熱を渡し、他に何の変化も残していないことになる。これは熱力学第二法則のクラウジウスの原理(1.3節、p. [*])に反する。よって、可逆サイクルBの熱機関としての効率が可逆サイクルAの熱機関としての効率よりも高くなることはありえない。

可逆サイクルAの熱機関としての効率が可逆サイクルBよりも低いとした場合も、AとBを入れ替えて考え、可逆サイクルBを熱機関、可逆サイクルAをヒートポンプとして動作させると、同様に低温熱源から高温熱源に熱を伝え、他になにも変化を残さないことになる。よって、同様にクラウジウスの原理から、可逆サイクルAの熱機関としての効率が可逆サイクルBの熱機関としての効率よりも高くなることはありえない。

同じ効率であれば、図1.17ように熱の移動がなく熱力学第二法則に反しない。よって、同じ二つの熱源で動作する可逆サイクルは、どんな中身のサイクルでも構成によらず必ず同じ効率となる。

図 1.17: 効率の等しい可逆サイクル
\includegraphics[width=60mm]{figures/HeatEnginePumpRevAandRevBEqu.eps}


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