例えば車のエンジンのピストンなどは大気中で動作するため、周囲の空気にも仕事をしている。ピストンの周囲の圧力が大気圧の0.1 MPa( MPa Pa)、ピストンの断面が0.1 m四方の正方形( m m m )を考える。この時、ピストンが周囲から内部に向かって、周囲の圧力により加えられる力は次のように計算できる。
このとき、ピストン内部の圧力が10.0 MPa( MPa Pa)であると、系からピストンへ加えられる力は次のように計算できる。
上の2つの値を式(B.1)へ代入すると、次のようにピストンで力が釣り合うために支持棒に加える必要のある力が求まる。
この際の、系がした仕事 、系が周囲にした仕事 [J]、系が支持棒にした仕事 [J]の関係は次のようになる。この節でのみ仕事の符号の向きの定義を変え、系からも周囲からもピストンへ向かい方向の仕事を正とする。
では、図B.2系の圧力が周囲の圧力よりも小さい場合はどうなるだろうか。例えば注射器を大気圧下で引く場合は注射器の内部の圧力が低い。ピストン(注射器)の周囲が同様に大気圧0.1 MPaで、系の圧力がそれよりも低い0.05 MPaのときを考える。ピストンの形状は同様とする。周囲の圧力により加えられる力は同様に 1 kNである。系からピストンへ加えられる力は次のように計算できる。
上の2つの値を式(B.1)へ代入すると、次のようにピストンで力が釣り合うために支持棒に加える必要のある力が求まる。
このように、周囲の圧力が系の圧力よりも高い場合には、系が膨張する場合にもピストンの支持棒を引っ張る必要があり、系が仕事をされているように感じるが、系とピストンはともに周囲に仕事をしている。
ここで仕事はすべて正の値とすると、以下の関係が成り立つ。
“系が大気にする仕事”が“系がする仕事”よりも大きい場合、系が膨張する場合でも注射器を引っ張るように引っ張って仕事をする必要があり、“取り出せる仕事”が負の値となる。通常、“系が周囲にする仕事”はピストンが周囲の圧力にする仕事のみではなく、支持棒への仕事を含めた、系がピストンにする仕事を考える。