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3.3.1 温度の定義

2つの系を熱を伝える壁でつなげても熱が伝わらないとき、2つの系は熱平衡にある。2つの系が熱平衡にあるとき、2つの系の温度は等しい。熱力学第零法則でこの熱平衡の関係をしめす。図3.2のように3つの系、系A系B系Cを考える。系Aと系Bが熱平衡にあり($ T_A=T_B$ )、系Aと系Cも熱平衡にある($ T_A=T_C$ )とき、系Bと系Cも熱平衡である($ T_B=T_C$ )。これが熱力学第零法則である。

図 3.2: 第零法則
\includegraphics[width=60mm]{figures/0thLaw.eps}

温度の基準として1990年国際温度目盛(ITS-90)[2]により、ネオンの三重点3.524.5561 Kや水の三重点273.16 Kなどが絶対温度の基準温度として決められている。この基準温度の間の温度を決めるための方法も必要である。長さや質量と違い、温度では基準の間の値を決めることが難しい。例えば、基準温度であるネオンの三重点24.5561 Kと水の三重点273.16 Kの物体が手元にある場合に、自分の体の温度が何度であるか知るためにはどうしたらいいだろうか。図3.3のように自分の長さを測る場合には、基準となる0.1 mの物体が複数個あれば2つで0.2 m、3つで0.3 mと基準となる物体に応じた精度で長さを知ることができる。また、質量であれば、自分の質量を測る場合に基準となる1 kgの物体が複数個あれば、秤を使うことにより重量を比較しある程度の精度で質量を知ることができる。 しかし、温度は示強性状態量であるので24.5561 Kの基準が何個あっても、他の温度を測ることはできない(2つで49.1122 Kのように)。24.5561 Kの物体は何個あっても24.5561 Kのままである。では、現在流通されている温度計はどのように温度を測っているのだろうか。よく見かける棒温度計では内部の液体(水銀や赤色の色素の入ったエタノール)の体積が温度変化と共に変化することを利用し、体積に応じた温度を示している。しかし、この液体の体積と温度の関係は単純に温度が二倍になれば体積が二倍という変化ではなく、温度ごとに体積変化の傾向が違う。そのため、温度による体積変化を利用した棒温度計を作るには、体積と温度の関係を知る必要がある。体積と温度との関係を知るためには(温度計を作るためには)、基準となる温度の間を埋める方法が定義されている必要がある。

図 3.3: 長さと質量と温度
\includegraphics[height=75mm]{figures/TemperatureMeasure.eps}

その基準の間の温度は絶対温度$ \varTheta$ [K]として1.4.7節の式(1.32) $ ^{\text{p.\pageref{eq-AbsoluteTemperature}}}$ で示す可逆サイクルであるカルノーサイクルのそれぞれの熱源とやりとりする熱量の比で国際的に定義されている[2]。

$\displaystyle \frac{ \vert Q_{2 可} \vert }{ \vert Q_{1 可} \vert } = \frac{\varTheta_2}{\varTheta_1}$ (1.32)

しかし、カルノーサイクルで実際に熱量を測ることは現実的に難しいため、温度域ごとに測定する計器が決められている。興味があれば、1990年国際温度目盛(ITS-90)の文献[2]を参照すると良い。また、日常使われる摂氏温度$ T$ [℃]は1.4.7 $ ^{\text{p.\pageref{sec-AbsoluteTemperature}}}$ に示したように次式で国際的にSI単位系において組立単位として定義されている[3]。

$\displaystyle \varTheta = T + 273.15
$


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