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2.1 直接測定可能な状態量

対象とする領域を系と呼び、この系の状態を表す物理量を状態量と呼ぶ。状態量として系の内部の物質の量を表す質量$ M$ [kg] 2.1と系の状態を表す体積$ V$ [m$ ^3$ ]・温度$ T$ [℃またはK]・圧力$ P$ [Pa]を直接測ることができる。 質量と体積は量を表し示量性状態量(Extensive Properties)と呼ばれ、温度と圧力は強さを表す値で示強性状態量(Intensive Properties)と呼ばれる 2.2。示量性状態量は系の物質量が二倍になると値が二倍になるが、示強性状態量では系の物質量が二倍になっても値は変わらない。 他の内部エネルギー[J]などの熱力学的な計算から導かれる状態量については後の4章で記す。

ある決まった質量(モル数)の系は二つの独立した状態量によって熱力学的平衡を完全に表すことが出来る。日本語の教科書でこの平衡状態と状態量の関係について広く使われている名前はないが、Y. Cengelらの英語の教科書[#!2010Cengel!#]では"State Postulate"、A. Bejan[#!2006Bejan!#]の教科書では"State Principle"とされている。直訳すると状態要請や状態原理となる。 単位質量 1 kgの系であれば、系内部の示量性状態量の値は質量あたりの値となる。これを比状態量(Specific Properties)[#!1997Cengel!#][#!2001Monde!#]と呼び記号は小文字で表す(体積$ V$ [m$ ^3$ ]であれば比体積$ v$ [m$ ^3$ /kg])。比状態量は系の物質量が二倍になっても値は変わらないので示強性状態量と同じ特徴を示し、同じように扱える。 このことから状態要請は次のように表すことも出来る。

熱力学的平衡状態は二つの独立な示強性状態量(比状態量)によって完全に表される。
これは今後状態量の関係を説明する上で非常に重要な要請である。

熱力学的平衡状態でのそれぞれの状態量の関係を表す方程式を状態方程式と呼ぶ。 比状態量の比体積$ v$ [m$ ^3$ /kg]、示強性状態量の温度$ T$ [℃またはK]と圧力$ P$ [Pa]で、どれか二つの値が決まれば残りの一つが決まるため、次式のように状態方程式を作ることが出来る。

$\displaystyle f(v, T, P) = 0
$

それぞれの状態量が独立ではない場合には上式の関係は成り立たない。例えば、圧力と温度は、蒸発などの相変化をしているときや、飽和蒸気や飽和水が共存しているときには、どちらかが決まれば他方も決まり独立な状態量ではない。そのため相変化中や二相以上が共存している系では温度と圧力で平衡状態を表すことができない2.3。 具体的な値として大気圧下(約0.1 MPa)では水の沸点は常に100 ℃であり、このとき温度と圧力は独立な状態量ではない。

この章ではそれぞれの直接測定可能な状態量について詳細を記す。測定できる示量性状態量は質量と体積、示強性状態量は温度と圧力がある。


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