椿 耕太郎
実験などで得られたデータを対数グラフで表すことがある。どのような場合に対数グラフを使うのだろうか。普通のグラフ(線形グラフ)では、データが直線上に分布すれば線形の関係にあることが分かるが、曲線状に分布した際にはどのような関係にあるか分かりづらい。しかし線形グラフでは曲線で表されるデータでも、対数グラフを使うと直線で分かりやすく表示されることがある。
どのような関数がどの対数グラフで直線で描かれるか表1にまとめる。表1に示すように対数グラフには横軸のみ対数軸と縦軸のみ対数軸の二種類の片対数グラフと、両方の軸が対数軸の両対数グラフの計三種類がある。表1の傾きや切片などを求めるための詳細な計算は後述する(A.1)。
グラフ(横軸-縦軸) | 直線になる関数 | (式) | グラフ上での傾き | グラフ上での切片 |
線形グラフ | 線形関数 | y = a x + b | a | b |
(線形-線形) | (具体例) | y = 90 x + 500 | 90 | 500 |
片対数グラフ | 指数関数 | y = a bx | log10 b | log10 a |
(線形-対数) | (具体例) | y = 0.9 × 1.1x | log10 1.1 ? 0.041 | log10 0.9 ? -0.046 |
片対数グラフ | 対数関数 | y = a loge x + b | (loge 10) a | b |
(対数-線形) | (具体例) | y = 2000 loge x + 1000 | (loge 10)2000 ? 4605 | 1000 |
両対数グラフ | べき関数 | y = a xb | b | log10 a |
(対数-対数) | (具体例) | y = 0.8 x2 | 2 | log10 0.8 ? -0.097 |
また、線形関数( )、指数関数( )、対数関数( 1)、べき関数( )に対して表1に示すように次の式(1)~式(4)を具体例とした。
それぞれの関数を特徴の比較のため図1から図4に線形グラフと三種類の対数グラフに描いた。
普通の線形グラフ(図1)に描き直線状に分布すれば線形関数( )である。他の関数の曲線で表される場合には線形グラフからどのような関数であるか判別することは難しい。しかし、対数グラフにおいて直線状に分布すればどのような関数であるか分かる。図2の片対数グラフ(線形-対数)で直線の関係が得られれば指数関数( )、図3の片対数グラフ(対数-線形)で直線の関係が得られれば対数関数( )、図4の両対数グラフで直線の関係が得られればべき関数( )である。
また、そのグラフの傾きと切片を読みとれば、具体的な関数の形を求められる。直線となる関数と対数グラフでの傾きと切片をまとめて表1に示している。対数軸の傾きと切片を読み取るときには緑色の と の軸の値を読み取る(この軸の説明は次の「2対数グラフの軸」に示す)。片対数グラフ(線形-対数)の図2では指数関数である青線の が直線である。 図から横軸 が100増えると緑の縦軸 が約4増加しており傾きが0.04程度、切片は-0.05程度と読み取れる。表1の片対数グラフ(線形-対数)の行から 、 であり 、 から とほぼ元の関数を読み取ることができる。 また、図4の両対数グラフでは、赤線で表されているべき関数 が直線となっている。緑で描かれた 軸と 軸で傾きを読みとると、横軸の が1増えると縦軸の は2増えているので傾きは2、横軸 で縦軸 は -0.1程度であるので切片は約-0.1である。表1の両対数グラフの行から 、 であり とほぼ元の関数の を読みとることが出来る。
このように詳細の分からない関数でも、特定の関数であれば対数グラフに描くことで式の係数の値が分かる。対数軸にある と 、 と の関係について次に示す。