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1.6.2 可逆サイクルの過程(カルノーサイクル)

同じ二つの熱源で動作する可逆のサイクルの過程を考える。可逆サイクルは全く同じ変化で、動作する向きを変えることで熱機関とヒートポンプの両方として動作できなくてはならない(熱機関を逆に動作させるとヒートポンプとして動作し、ヒートポンプを逆に動作させると熱機関として動作する)。1.4節(p. [*])での断熱過程と等積過程から成り立つサイクルを例に考えてみる。このサイクルを熱機関として動作させた場合とヒートポンプとして動作させた場合の温度変化は、図1.9と図1.13であり、まとめて書くと図1.21のようになる。また、熱機関とヒートポンプの熱源との温度の関係を図1.22に示す。図1.21と図1.22中の過程の番号は対応している。

図 1.21: 熱機関とヒートポンプにおける温度変化
\includegraphics[width=100mm]{figures/SimpleCycleVolumeHeatenginepumpTemperature.eps}

1.21、図1.22に示すように、熱機関は高温熱源から熱を受け取り低温熱源に熱を与えるため、高温熱源側ではサイクルは高温熱源よりも温度が低く、低温熱源側では低温熱源よりも温度が高くならなくてはならない。また、ヒートポンプでは高温熱源へ熱を与え低温熱源から熱を受け取るため、高温熱源側ではサイクルは高温熱源よりも温度が高く、低温熱源側では低温熱源よりも温度が低くならなくてはならない。

図 1.22: 熱機関とヒートポンプにおける熱源との関係
\includegraphics[width=50mm]{figures/HeatEnginePump.eps}

可逆のサイクルでは、全ての過程を逆向きにも動作させることができなくてはいけないが、熱源との温度の関係が熱機関とヒートポンプでは異なる。熱源の温度との関係を考えると、高温熱源よりもサイクルの温度が高い場合、熱機関として動作した際に熱源から熱を受け取ることが出来ない(図1.21の過程4→3)。高温熱源よりもサイクルの温度が低い場合、ヒートポンプとして動作した際に熱源に熱を与えることが出来ない(図1.21の過程3→4)。そのため図1.23の過程3→4ようにサイクルが熱源と同じ温度で、熱機関では高温熱源から熱を受け取り、ヒートポンプでは同じ高温熱源へ熱を与える過程を考えなくてはいけない。可逆のサイクルとなるためには図1.21の熱機関の線とヒートポンプの線が重ならなくてはいけない。準静的過程で状態が熱平衡のまま限りなくゆっくり変化すれば、この熱のやりとりが可能である。

図 1.23: 可逆サイクルにおける温度変化
\includegraphics[width=100mm]{figures/SimpleCycleVolumeReversibleTemperature.eps}

この準静的過程は等温変化で熱源とサイクルの温度差がない過程である。このことから、可逆サイクルでは、高温熱源と低温熱源との熱交換する過程は準静等温過程でなくてはならない。熱源と熱のやりとりをすると準静等温過程以外では不可逆となるため、温度の変わる過程である図1.23の過程2→3と過程4→1での過程は熱のやりとりのない断熱過程である必要がある。そのため過程2→3と過程4→1は可逆断熱過程でなくてはならない。

以上から、二つの熱源で動作する可逆サイクルは準静等温過程→可逆断熱過程→準静等温過程→可逆断熱過程で構成される。この可逆サイクルをカルノーサイクルと呼ぶ。


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