可逆サイクルに近づける

可逆サイクル(カルノーサイクル)に近づけるためには、各過程の不可逆損失を減らす必要がある。可逆サイクル(カルノーサイクル)の各過程を不可逆にした圧縮過程→等温加熱過程→膨張過程→等温冷却過程を可逆過程に近づけるための各過程での不可逆要素を挙げる。

圧縮過程と膨張過程を可逆圧縮過程と可逆膨張過程に近づけるためにはピストンと壁面の摩擦、内部の流体の渦の損失を減らす。壁の素材や形状を摩擦損失の小さいものとすることで、可逆サイクルに近づけることができる。また内部流体の渦はピストンの移動速度が小さければ発生しにくくなるため、ゆっくり動かすことで可逆サイクルに近づく。系の温度が周囲よりも高い場合には、熱が周囲に伝わることにより不可逆損失が発生するため、断熱性の高い壁により可逆過程に近づけることができる(図D.9)。

図 D.9: 不可逆損失要因
\includegraphics[width=60mm]{figures/LowIrreversibility.pdf}

等温加熱過程と等温冷却過程を準静的等温加熱過程と準静的等温冷却過程に近づけるためにも、ピストンが動くため、先ほどと同様、摩擦の小さい素材や形状とし、渦が発生しにくいようにゆっくりと動かす。高い断熱性も同様に必要である。また、加熱・冷却過程では熱源と系の温度差が不可逆損失の要因となる。準静的過程では温度差を無限小として無限の時間をかけて熱を伝える。実際の過程で無限の時間はかけられないので、近づけるためには出来るだけ時間を長くかけて、温度差を小さくすることである。別の考え方として、車のエンジンのような内燃機関では系内部で燃焼をし、系内部が熱源となるため、系と高温熱源の間に温度差がなく、温度差による不可逆損失がない。また、低温熱源である空気を系内部へ直接取り込むため、ここでも熱源と系との間に温度差がなく、温度差による不可逆損失がない。このように内燃機関は外燃機関に比べサイクルと熱源の温度差の分だけ不可逆損失が小さくなる(図D.10)。

図 D.10: 内燃機関と外燃機関の熱源
\includegraphics[width=120mm]{figures/InternalExternalEngine.pdf}

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