「ある温度の物体からそれより高い温度の物体へ熱を移すだけで、ほかに何の結果も残さないような過程は実現不可能である」
熱が伝わる現象で、時間が正しく流れる向きでは高温の物体と低温の物体を接触させて、高い温度の物体から低い温度の物体へ熱を移すだけで、ほかに何の結果も残さないような過程は簡単に実現できる(図2.3-左)。しかし、この現象の時間の流れの向きを逆にして、高温物体と低温物体を接触させて、低い温度の物体から高い温度の物体へ熱を移すだけで、ほかに何の結果も残さない過程は実現不可能である(図2.3-右)。高温物体と低温物体の間に何らかの系(装置など)を入れても同じである。この熱の伝わる向きで時間の流れる向きが判断できる。
低温物体から高温物体へと熱を移す装置にエアコンや冷蔵庫に用いられるヒートポンプがある。このヒートポンプを動作させるためには仕事が必要である。この際は熱を移すだけでなく、外部からヒートポンプへ仕事を与えた(エアコンや冷藏庫では電気エネルギーをコンセントから受け取り仕事に変換した)という結果を残すためクラウジウスの表現に反しない。
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