冷房で運転しているエアコンを例にとり、冷たいものをどのようにさらに冷やすかを見ていく。
熱力学第二法則よりそのまま熱を低温熱源から高温熱源へ伝えることは不可能である。そこで冷凍機・ヒートポンプでは次のような過程を行う(図1)。
- 低温熱源よりもさらに温度の低い箇所をつくり、低温熱源から熱を受け取る
- 低温熱源より温度の低い箇所で受け取ったエネルギーを高温側へ輸送する
- 高温熱源よりもさらに温度の高い箇所をつくり、高温熱源へ熱を伝える
この過程を実現するために、冷凍機・ヒートポンプの中に冷媒と呼ばれる流体を流す。冷媒の温度を変化させるためには圧力を変化させる。周囲から仕事をし圧力を上げると冷媒の温度は上がり、圧力を下げると冷媒の温度は下がる。
冷凍機・ヒートポンプの過程(1-1)〜(1-3)は具体的には次のように行われる。
- 冷媒の圧力が低く、低温熱源(冷房-室内空気)よりも温度の低い冷媒低温部により、低温熱源(冷房-室内空気)より熱を受け取る。冷媒の圧力は低温熱源温度よりも冷媒温度が低くなるだけの低圧が必要である。冷媒は低温熱源(冷房-室内空気)より熱を受け取り、内部エネルギーが増加する。
- 冷媒低温部で熱として受け取ったエネルギーを冷媒高温部へ輸送するために冷媒を冷媒低温部から高温側へ流す。冷媒低温部で内部エネルギーの増加した冷媒が流れることでエネルギーが冷媒低温部から高温側へ輸送される。高温側へ流す際には、冷媒の温度を高くしつつ流さなくてはいけない。冷媒に仕事をすることで圧力を上げることで温度を上げ、冷媒高温部へ流す。この過程では冷媒の圧力を上げることと、冷媒を流すことの二つを行う。
- 冷媒の圧力が高く、高温熱源(冷房-外気)温度よりも温度の高い冷媒高温部により、高温熱源(冷房-外気)へ熱を伝える。冷媒の圧力は高温熱源温度よりも冷媒温度が高くなるだけの高圧が必要である。冷媒は高温熱源(冷房-外気)へ熱を与え、内部エネルギーは低減する。
- 冷媒低温部から冷媒高温部へ高い内部エネルギーを保有した冷媒が運ばれ高温熱源へエネルギーが伝えられる。そのままだと冷媒が冷媒高温部に溜まってしまうため、内部エネルギーの小さくなった冷媒を圧力を下げながら冷媒低温部へ運ぶことにより連続的な運転を可能にする。この過程を最後に追加することで連続的な運転が可能となる。
このそれぞれの過程を行うのは次の構成要素であり、図2のように構成される。
- 蒸発器(熱交換器)
- 圧縮機
- 凝縮器(熱交換器)
- 膨張弁
圧力を高くし冷媒を流すために圧縮機で仕事を与え、圧力を下げるには膨張弁を、高温熱源、低温熱源と冷媒がそれぞれ熱をやり取りするためには熱交換器を用いる。高温側の熱交換器は通常冷媒が凝縮するため凝縮器と、低温側の熱交換器は通常冷媒が蒸発するため蒸発器と呼ぶ。
実際に身の回りで使われている冷凍機・ヒートポンプであるエアコンでは室内機と室外機があり、その間が二本の銅管で繋がれ冷媒が循環しているのが一般的である(図3)。冷房運転では室内機で室内の空気を取り込み熱を奪い冷却した冷たい空気を室内へ戻し、室外機で外気を取り込み加熱した熱い空気を室外へ戻す。このときの低温熱源は室内の空気、高温熱源は外気である。室内機と室外機を繋ぐ銅管内は冷媒が循環しており、室内と室外の間でエアコンによって空気が移動することはない。
エアコンの冷房運転では室内機に低温熱源である室内空気よりも温度の低い冷媒低温部を作り室内を冷却し、室外機に高温熱源である外気よりも温度の高い冷媒高温部を作り室外へ放熱する。
エアコンで冷房と暖房の切り替えは室内機と室内機の熱交換器の働きを変えることで切り替える。冷房と暖房を切り替えると室外機内に設置された四方弁が動き室内機と室外機の熱交換器の働きを入れ替える。圧縮機と膨張弁は運転時に騒音が発生するため通常室外機の中に置かれている。図4に示すように、冷房運転では圧縮機から出た冷媒は室外機の熱交換器に入り凝縮器として外気を加熱し、膨張弁を通過し減圧され、室内機の熱交換器に入り蒸発器として室内空気を冷却する。四方弁を切り替えると図4の暖房運転のように、圧縮機を出た冷媒は室内機の熱交換器で凝縮器として室内の空気を加熱し、室外機へ戻り膨張弁を経て熱交換器で蒸発器として外気を冷却する。
トップページへ
この図を含む文章の著作権は椿耕太郎にあり、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に公開する。最新版およびpdf版はhttps://camelllia.netで公開している。