椿 耕太郎 https://camelllia.net
不可逆性と熱の関係を表す熱力学第二法則について記す。また、その熱力学第二法則から熱機関の理想的な効率と熱力学的温度との関係を求める。最後に、その効率から不可逆性の指標となるエントロピーについて定義する。
ある現象が過去から未来へと正しい時の流れで起こっているのか、逆に時が流れているのか判断する際に熱が大きく関わってくる。SFのように時間を巻き戻すことができるとした場合に、ある現象が正しい時間の向きであるか、逆向きであるか判断する基準は何であろう。時間を巻き戻す装置が壊れて時間が正しく流れているか巻き戻っているのかわからなくなってしまったとして、ボールが真空の広い空間を落ちている(もしくは上がっている)場合、加速しながらボールが下降している向きが正しいのか、逆の減速しながら上昇している向きが正しいのか、判断は難しい。 しかし、ボールが大気中を落ちている場合には空気との摩擦で熱が発生し、時間の経過とともに真空中と比べると遅くなるため、時間の流れる向きの判断が出来る。
もっと極端な例では、お手玉を床に落とすと運動エネルギーにより仕事をされ発熱し止まる。その現象を逆にして、床に止まっているお手玉が床から熱を奪いお手玉に仕事をして急に上昇を始めたら時間の流れが逆向きであることがすぐに分かる(図1)。 また、熱いものと冷たいものをくっつけて熱が伝わり同じ温度になっていく状況を逆にして、同じ温度のものの片方が急に熱くなりもう一方が冷たくなっていけば、これも時間の流れが逆向きであることがすぐに分かる(図2)。 このように不可逆な現象には熱が関わっている。
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