現実的な非平衡な系において、これまでに定義した温度や圧力などを適用するため、局所熱力学的平衡の概念を導入する。局所熱力学的平衡とは系を非常に小さくとり局所的には温度や圧力の分布が一様で熱力学的平衡が成り立っている状態である。この局所熱力学的平衡はほとんどの現実的な状況において成り立つと考えられ、統計熱力学的には分子数とエネルギーの関係がボルツマン分布となる。連続体として扱えないような分子数が少ない場合や変化の時間が短い場合は局所熱力学的平衡が成り立たないこともあるが、例えば、1ccの容器内での1msの時間で起こる状態変化は十分に局所熱力学的平衡を満足している[8]。このことから、局所熱力学的平衡が成り立つ系であれば、全体として熱力学的平衡が成り立っていない系であってもこれまでの熱力学の結果を適用できる(温度などを使える)。
詳細については文献[8][9]や、ボルツマン分布については統計熱力学の参考書を参照するとよい。温度とボルツマン分布についてはAtkinsの本[10]もわかりやすい。