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B.4 準静的過程における微小差
準静的過程において、系と周囲は熱平衡と力学平衡が成り立っており、系と周囲の温度と圧力は等しい。しかし、熱や仕事のやり取りをするには温度差や圧力差が必要である。準静的過程においては、ゼロの極限をとった微小な差をとり、無限の時間をかけることにより熱や仕事のやり取りをする。この状態で、系と周囲の温度や圧力は等しいのだろうか、異なっているのだろうか。準静的過程とは、平衡を維持したまま変化する過程であるので、温度と圧力は等しくなくてはいけない。
この準静的過程でのゼロの極限をとった微小な差について考えよう。ゼロの極限をとった微小な温度差
[℃またはK]は次のように表される。
ここで、
[℃またはK]は任意の有限の温度差とする。例として壁での熱伝導による熱の伝わりを考えると、熱伝導の式(フーリエの法則B.2)により次のようになる(壁の中の温度分布は線形と仮定する)。
ここで、
[J]は伝わる熱量、
[m
]は熱の伝わる面積、
[W/(m
K)]は壁の熱伝導率、
[m]は壁の厚さ、
[s]は経過時間である。ここで、温度差
[℃またはK]に微小な温度差
[℃またはK]を代入する。
面積
[m
]、熱伝導率
[W/(m
K)]は有限の大きさであり、経過時間
[s]もどれだけ大きな時間(例えば1億年)経過しても有限の大きさである限り
で割ればゼロとなる。このように、どれだけ長くても有限の時間の経過であればゼロの極限をとった差はゼロとみなせ系と周囲の温度が等しいと考えられる。経過時間
[s]が
である場合のみ分母の
を消し、熱
[J]がゼロではない値を持つことができるため、無限の経過時間でのみゼロの極限をとった差により熱を伝えることができる。
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