この準静的過程でのゼロの極限をとった微小な差について考えよう。ゼロの極限をとった微小な温度差 [℃またはK]は次のように表される。
ここで、 [℃またはK]は任意の有限の温度差とする。例として壁での熱伝導による熱の伝わりを考えると、熱伝導の式(フーリエの法則B.2)により次のようになる(壁の中の温度分布は線形と仮定する)。
ここで、 [J]は伝わる熱量、 [m ]は熱の伝わる面積、 [W/(m K)]は壁の熱伝導率、 [m]は壁の厚さ、 [s]は経過時間である。ここで、温度差 [℃またはK]に微小な温度差 [℃またはK]を代入する。
面積 [m ]、熱伝導率 [W/(m K)]は有限の大きさであり、経過時間 [s]もどれだけ大きな時間(例えば1億年)経過しても有限の大きさである限り で割ればゼロとなる。このように、どれだけ長くても有限の時間の経過であればゼロの極限をとった差はゼロとみなせ系と周囲の温度が等しいと考えられる。経過時間 [s]が である場合のみ分母の を消し、熱 [J]がゼロではない値を持つことができるため、無限の経過時間でのみゼロの極限をとった差により熱を伝えることができる。