自由膨張過程
5.1.4節
での過程とは別に必ず不可逆となる自由膨張過程がある。自由膨張過程は体積は膨張するが、熱のやり取りも仕事の作用もない過程である。図D.5のように断熱された容器内で、内部を密閉している壁とその外側に更に壁を考える。左図の左側の部屋に気体が入っており右側の部屋は真空であるとする。内部の壁に穴を空けると体積は外側の壁まで増えるが外部に仕事をしない。この過程が自由膨張過程である。
同じように体積の増える過程の断熱膨張過程と比較する(図D.5)D.7。共に膨張過程なので[m]は増加する。断熱膨張では仕事を周囲にすることで内部エネルギー[J]が減少し温度が下がる。自由膨張過程では、周囲と熱のやり取りがなく仕事も作用しないため、内部エネルギー[J]は変化しない。断熱膨張での内部エネルギーから外部への仕事への変化は、自由膨張過程では運動エネルギーとなる。その後、渦による粘性消散や穴で管壁と流体との摩擦で運動エネルギーから熱に変換される。熱に変換されたエネルギーは再び内部エネルギーとなるため、過程の前後で内部エネルギーは変化しない。
仕事から熱へは変換できるが、一つの熱源において熱から仕事への変換は不可能(熱力学第二法則 トムソンの表現 2節
)なので不可逆の過程である。
脚注
- D.7
- 断熱膨張過程のピストンの外へ動く速度を無限大まで速くし、内側の壁が瞬間的に外側の壁の位置まで移動する過程が自由膨張過程であり、ピストンに系から力が働かないため仕事を取り出すことが出来ない。
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