今後進める上で、二つの熱源間で動作する熱機関の効率とヒートポンプの性能の定義が必要であるので、ここで定義をしよう。
効率とは装置に入ってきたものをどれだけ必要なものに変換できるかを示す割合である。今、熱機関で必要なものは仕事
[J]であり、入ってくるものは高温熱源からの熱
[J]
1.18である。
少ない高温熱源からの熱で多くの仕事に変換出来ると効率がよいといえる。そこで、熱機関の効率 は
で定義される(図1.16)。
全ての熱を仕事に変換できれば効率は1となる1.19。
式(1.20)の式の仕事を熱力学第一法則の関係から熱だけで表すことも出来る。
熱機関は同じサイクルを繰返し連続的に動作するので内部エネルギーの変化[J]がゼロであるので、熱力学第一法則(式(1.19)
)より熱機関では高温熱源から受け取る熱
[J]と低温熱源に移す熱
[J]1.20、得られる仕事
[J]の大きさの関係
1.21は以下のようになる。
上式(1.22)と式(1.20)から熱だけで効率を次式のように表せる
1.22。
ヒートポンプでは低温熱源から高温熱源へ熱を伝えるのが目的であるので、少ない仕事
[J]で多くの熱を移せると性能がよいといえる。そこで、ヒートポンプの性能を表す成績係数は高温熱源への熱
[J]
1.23により
で定義される(図1.17)1.24。電気ヒーターのように仕事を全て熱にして高温熱源に伝える場合には成績係数は1となる1.25。
熱力学第一法則から成績係数(式(1.25))を熱だけの式で表すことも出来る。
ヒートポンプは熱機関と同様に同じサイクルを繰返し連続的に動作するので内部エネルギーの変化[J]がゼロであり、
熱力学第一法則(式(1.19)
)よりヒートポンプでは低温熱源から受け取る熱
[J]1.26(正の値)と高温熱源へ移す熱
[J](負の値)、必要な仕事
[J](正の値)の関係は
1.27次のように表される。
上式((1.26))と式(1.25)より成績係数を熱だけで
とも書ける
1.28。
脚注
- 1.18
- 下付のL, EはLow temperatureのLとheat EngineのEを表している。
- 1.19
- 車のエンジンの効率は30~40%程度である[][][]。
- 1.20
- 下付のL, EはLow temperatureのLとheat EngineのEを表している。
- 1.21
- プラスマイナスを考えると、全てのエネルギーは系に入る方向を正、出る方向を負としているので、絶対値を外すと次式のようになる。ちなみに熱機関では常に高温熱源からの熱
[J]は正の値に、低温熱源に移す熱
[J]は負の値、得られる仕事
[J]は負の値となる。
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(1.21) |
- 1.22
- 絶対値を外した場合は
と定義される。
- 1.23
- 下付のHはHigh temperatureのH、Pはheat PumpのPとを表している。
- 1.24
- 高温熱源側を利用する場合はヒートポンプと呼ばれる。また、低温熱源側を利用する場合は冷凍機と呼ばれ、分子は低温熱源とやりとりする熱量
[J]となる。またヒートポンプや冷凍機の成績係数はCOP(Coefficient of Performance)とも呼ばれる。
- 1.25
- 一般的なエアコンの成績係数はカタログ性能で4~6程度[]である。
- 1.26
- 下付のLはLow temperatureのL、Pはheat PumpのPを表している。
- 1.27
- プラスマイナスを考えると、全てのエネルギーは系に入る方向を正、出る方向を負としているので、絶対値を外すと次式のようになる。ちなみにヒートポンプでは常に低温熱源から受け取る熱
[J]は正の値、高温熱源へ移す熱
[J]は負の値、必要な仕事
[J]は正の値となる。
- 1.28
- 絶対値を外すと
と定義される。
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