ヒートポンプ
5.1.5節の二つの熱源間で動作する閉じた系の熱機関(図5.6
のサイクル)の過程を逆にした、図5.11のようなサイクルを考える。状態1から状態4では断熱圧縮過程、状態4から状態3では等積冷却過程、状態3から状態2では断熱膨張過程、状態2から状態1では等積加熱過程となる。
図 5.11:
ピストンでのヒートポンプとして動作するサイクル
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このサイクルで外部と仕事のやりとりがある過程は体積の変化する状態1から状態4と状態3から状態2である。外部からサイクルに仕事をしている1→4の過程での仕事
[J]と外部へサイクルが仕事をしている3→2の過程での仕事
[J]では、ヒートポンプとして動作するには外部から仕事されるように
[J]が大きくならなくてはならない。このサイクルでの圧力変化の概略は図5.12のようになる。この過程で体積の変化は等しいので、仕事がどちらが大きいかは圧力によって決まり、次の関係が成り立つ。
過程1→4では仕事
をされているので正の値、過程3→2では仕事
をしているので負の値となるため絶対値をとり大きさを比較する。
状態1から状態4ではサイクルが仕事をされており、状態3から状態2では周囲に仕事をしているので、合わせるとサイクル全体としては、周囲から
[J]の仕事5.11をされている。状態1から再度状態1に戻った場合、内部エネルギーの変化はゼロなので、
上式と仕事の大きさの関係の式(5.7)から、
過程2→1では熱
を外部から受け取り正の値となり、過程4→3では外部へ熱
を伝え負の値となることを考慮し絶対値をとり次式を得る。
図5.13のように、状態4から状態3では高温の熱源4-3へ熱
[J]を渡し(負の値)、状態2から状態1では低温の熱源2-1から熱
[J]を受け取っている(正の値)。このように、サイクル全体としては仕事
[J]をされ、低温熱源から高温熱源へ熱を伝えており、ヒートポンプとして働いている。
図 5.12:
ピストンでのヒートポンプとして動作するサイクルの圧力変化
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図 5.13:
ピストンでのヒートポンプとして動作するサイクルの温度変化
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熱機関と同様にこのように高温と低温の二つの熱源で動作するヒートポンプを1.5.1章では図5.14のように中央がくびれた形で表していた。仕事は周囲にした仕事と周囲からされた仕事の差
[J]をまとめて示す。熱機関と同様に、中央がくびれた形で表した際にはヒートポンプであることだけを表しどのような過程で構成されたヒートポンプでもよい。
実際に世の中で使われているヒートポンプとして冷蔵庫やエアコンがある。冷蔵庫やエアコンのサイクルは閉じた系ではないが、同じように考えられる。冷蔵庫やエアコンと図5.11のサイクルの対応は以下のようになっている。
- 1→4 圧縮され周囲から仕事をされる : 圧縮機(冷蔵庫での騒音の原因)
- 4→3 冷却され熱が周囲に伝わる : 凝縮器(冷蔵庫では庫外にあり、冷房では室外器で熱を捨て、暖房では室内器で室内を温める)
- 3→2 膨張し周囲に仕事をする : 膨張弁(仕事は取り出さず、粘性消散5.12で熱に変換されている)
- 2→1 加熱され熱が周囲から伝わる : 蒸発器(冷蔵庫では庫内を冷やし、冷房では室内器で室内を冷やし、暖房では室外器から熱を奪う)
熱機関やヒートポンプの様なサイクルではなく、サイクル全体として周囲と熱や仕事のやりとりがゼロとなる付録D.4
のような役立たずのサイクルもありえる。
脚注
- 5.11
- 絶対値を外すと
[J]
- 5.12
- 流れで渦が発生し徐々に小さな渦となり、粘性により渦の運動エネルギーが熱に変換される
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