A.2 位置エネルギー

位置エネルギーの詳細な計算を示す。 距離r [m] 離れた物体1(質量m1 [kg] )と物体2(質量m2 [kg] )の間に働く重力F [N] は重力定数G=6.67428×1011 N m2/kg2[14]により次のように表される。

F=Gm1m2r2 (A.14)

物体2を地球とし地球上の物体1に働く重力を、地球の質量m2=m=5.972×1024 kg、地球の赤道半径r=r= = 6.378 136 6×106 m[14]から計算する。

F =Gm1mr2
=6.674 28×1011Nm2/kg25.972×1024kgm1(6.378 136 6×106m)2
=9.79798090659N/kgm1
9.80m/s2m1 (A.15)

このようによく見る形の式になる。上式の9.80 m/s2Gm/r2 [m2/s] )は重力加速度と呼ばれる。地球の近くの質量分布が一定ではなく密度の高い土壌や低い土壌などのばらつきがあることや、地球半径が一定でないことから、場所によって異なる値となる。国際度量衡総会で標準とされているのは9.806 65 m/s2で、日本の国際基準点である京都大学で測定された値は9.797 072 7 m/s2である[14]

距離をr1 [m] からr2 [m] へ動かすためには、重力と逆方向に同じ大きさの力を物体1もしくは物体2に作用させるため、される仕事W [J] は式(A.14)より次のように計算できる。

W =r1r2Fdr
=r1r2Gm1m2r2dr
=Gm1m2r1r21r2dr
=Gm1m2[1r]r1r2
=Gm1m2(1r11r2)
=Gm1m2r2r1r1r2 (A.16)

物体の速度を0とし、仕事が力学的エネルギー以外には変換されないとすれば、された仕事だけ物体間の位置エネルギーが変化する。r1からr1+Δrまで変化した際の重力による位置エネルギーの変化ΔE [J] は式(A.16)より次のように表される。

ΔE =Gm1m2r1+Δrr1r1(r1+Δr)
=Gm1m2Δrr1(r1+Δr)

我々の身の回りで位置エネルギーを考える際には物体2が地球であり、物体1が地上の対象物である。地球との関係では距離r1は地球の重心と物体1の重心の距離であり、地上の物体の長さは地球に比べ十分に小さいため、距離は地球の半径とできr1=r = 6.378 136 6×106 m となる(地球の赤道半径[14]を用いた)。物体の移動距離(持ち上げる高さ)Δrが数十メートル程度であればrに比べて104程度と十分に小さいため通常はr+Δrrとして次式の様に表す。

ΔE =Gm1mΔrr2

ここで物体1が地上にあるとすれば重力定数G=6.67428×1011 N m2/kg2、地球の質量m=5.972×1024 kg、地球の赤道半径r = 6.378 136 6×106 mは定数である[14]ので、まとめて数値で表すと次式となる。

ΔE =Gm1mΔrr2
=6.674 28×1011Nm2/kg2×m1×5.972×1024kgΔr(6.378 136 6×106m)2
=9.79798090659N/kgm1Δr
9.80m/s2m1Δr (A.17)