温度の測定の簡単な手段は身体を使うことである。長さでは手の長さや指の長さと比べる。 温度の比較で、二つの物体の温度を比べる場合、一番簡単な方法は手で触ってみて比べてみることである。比べる物体がこれまでに出てきた熱源のように(図C.3)一定の温度で熱のやり取りをしても温度が変化しないのであれば、手を熱源に入れて手の感覚になじむまで待って比較すればよいので簡単に比較できる。しかし、実際に身の回りにある物体は温度が一定でもないし、熱を受ければ温度が変わる。 つまり、「測定対象の物体の温度が一定ではなく分布がある」こと、「測定機器との熱のやり取りによって温度が変わってしまう」こと、の二つの問題が挙げられる。
先ほどの手で触って比較する際にこの二つの問題がどう現れるか考えてみる。まず温度の分布がある場合に知りたい場所だけではなく周りの影響も混ざってしまうため、手で触る場合には小さくても指の大きさが必要である(図C.3)。温度を比較したい対象がそれよりも小さい場合には比較が難しい。また、測定対象は手の温度と同じとは限らない。手より冷たい温度の物体を触った場合、熱が手から物体に伝わり物体の温度はよりも高くとなってしまう(図C.3)。物体がある程度大きければ触ることでの温度変化は小さく元の値に近い温度が計れるが、物体が砂粒程度に小さいものであるとすぐに手の温度と同じになってしまい、元の温度は分からない。このように温度を比較するというのは非常に難しい。 では、どのような状態であれば確実に温度を比較することができるだろうか。温度の違う二つの物体、例えば比較したい物体と温度計を接触させた場合、始めは温度が違うため熱が伝わり比較したい物体も温度計も温度が時間と共に変化する。しかし、長い時間待てば温度差は徐々に小さくなり伝わる熱も小さくなり、十分に長い時間待つと温度差はなくなり熱も伝わらなくなる。このときは物体と温度計は同じ温度となっている、と言えるだろう。
![]() Figure C.1: 熱源への影響
![]() Figure C.2: 大きさの影響
![]() Figure C.3: 温度変化の影響
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