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2.1.5 出入の項 面での作用

境界面で作用する出入の現象に拡散がある。対象とする物理量の値に分布がある場合に、流体の流れではなく分子運動によって物理量が運ばれるのが拡散である。拡散は流れによる輸送ではないので流れがない状況(流体の速度はゼロ)でも拡散により運ばれる。物質拡散では、分子が入れ替わることにより物質が運ばれる。 水槽の上部と下部で水とインクの層を乱さないように静かに作ったとき、流れを起こさなくても次第に水とインクの境界が曖昧になり、長い時間の後には水とインクが混ざり水槽の中身はすべて薄いインクとなる。流れがないときにゆっくりと混ざる現象を拡散と呼ぶ。水の入った水槽に、ゆっくりとインクを一滴落とした後にインクが薄くなり広がっていくのも拡散である。

拡散の影響は式(2.4) $ ^{\text{p.\pageref{eq-GovJ1}}}$ の“境界面での作用による出入量”に含まれ、運動量の拡散(粘性2.2)、エネルギーの拡散(熱伝導)、物質拡散がある。それぞれの物理量に勾配があるとき、拡散による輸送量$ F_{dif}$ は拡散係数$ D$ [m$ ^2$ /s](運動量では動粘性係数、エネルギーでは熱拡散係数、物質では物質拡散係数)により、次式により表される2.3

$\displaystyle F_{dif} = - D \bm{A} \cdot \bm{\nabla} \phi$    

ここで$ \phi$ は単位質量あたりの対象とする物理量を表す。図2.2の左側の面を考えると、

$\displaystyle F_{dif, {x -}} = - D \bm{A}_{x -}\cdot \bm{\nabla} \phi_{x -}= - D \left. \frac{\partial \phi}{\partial x}\right\vert _{x -}dydz$    

この拡散の項は運動量、エネルギー、化学種の保存式でそれぞれ以下のようになる。

運動量 (ニュートンの粘性法則)
粘性によるx方向速度成分$ u$ [m/s]のy方向の速度勾配による剪断応力$ \tau$ [N/m$ ^2$ ]は粘性係数$ \mu$ [Pa$ \cdot$ s]により次式で表される。

$\displaystyle \tau = \mu \frac{\partial u}{\partial y}
$

運動量の時間変化である力が応力と面積の積から次式で求められる。

$\displaystyle \tau A = \mu \frac{\partial u}{\partial y} dydz
$

エネルギー (フーリエの法則)
x方向の温度勾配による熱流束$ q$ [W/m$ ^2$ ]は熱伝導率$ k$ [W/(K$ \cdot$ m)]により次式で表される。

$\displaystyle q = -k \frac{\partial T}{\partial x}
$

伝熱量$ Q$ [W]は伝熱の面積$ A$ [m$ ^2$ ]とともに次式で表される。

$\displaystyle Q = -k \frac{\partial T}{\partial x} dydz
$

化学種 (フィックの拡散法則)
質量流束$ j$ [kg/(m$ ^2\cdot$ s)]は濃度(質量分率)$ \omega$ [-]([kg/kg])のx方向の勾配により拡散係数$ D$ [m$ ^2$ /s]を用いて次式で表される。

$\displaystyle j = - \rho D \frac{\partial \omega}{\partial x}
$

質量流量は上式と面積の積で次式で求められる。

$\displaystyle A j = - \rho D \frac{\partial \omega}{\partial x} dydz
$


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