蒸気圧縮式冷凍機の成績係数

冷凍機・ヒートポンプの性能は成績係数で表す。 蒸気圧縮式冷凍機で仕事が必要な要素は圧縮機であり、エアコンや冷蔵庫ではモーターで電気エネルギーから仕事に変換している。この圧縮機で必要な仕事が小さくなればエアコンや冷蔵庫の消費電力は小さくなるため、仕事はなるべく小さくしたい。この仕事の大きさは冷媒高温部と冷媒低温部での冷媒の圧力差に対応している。圧縮機で変える必要のある圧力差が大きければ大きいほど必要な仕事は大きくなる。 圧縮機での必要な仕事は冷媒高温部と冷媒低温部の圧力差に応じて大きくなる、すなわち冷媒高温部と冷媒低温部の温度差による。冷媒高温部と冷媒低温部の温度差はより小さい方が圧縮機での仕事は小さくなる。しかし、低温熱源から高温熱源に熱を伝えるためには熱源の温度に応じた圧力差が最低限必要である。 例えば夏の冷房で外気温が35 ℃、室内が27 ℃であるとき、エアコンによく使われる冷媒R410aの35 ℃の蒸気飽和圧力2.14 MPaであり27 ℃の蒸気飽和圧力1.74 MPaである(飽和圧力はCoolProp[1]によった)。冷媒高温部は35 ℃よりも高い温度が必要であり、冷媒低温部では27 ℃よりも低い温度が必要であるので、冷媒の圧力は飽和蒸気であれば冷媒高温部で2.14 MPaよりも高く冷媒低温部で1.74 MPaよりも低い必要があり、圧力差は最低0.4 MPa必要である。

この圧縮機で時間あたりに仕事として必要なエネルギー$P$ [W] はエアコンや冷蔵庫での消費電力となるので小さいほうが成績の良い冷凍機・ヒートポンプである。冷房や冷蔵庫のように冷凍機として低温熱源を冷やすために用いられる場合には冷媒低温部で低温熱源から冷媒が奪う伝熱量 $\varPhi_{\rm E}$ [W] が大きい方がよく冷やすことができ、暖房のようにヒートポンプとして高温熱源を加熱するためにもちいる場合には冷媒高温部で冷媒が高温熱源に与える伝熱量 $\varPhi_{\rm C}$ [W] が大きい方がよく暖めることができる。よって伝熱量 $\varPhi_{\rm E}$ $\varPhi_{\rm C}$は大きい方が成績のよい冷凍機・ヒートポンプである。小さい方が良い仕事率$P$を分母に大きい方が良いそれぞれの伝熱量 $\varPhi_{\rm E}$ $\varPhi_{\rm C}$を分子にすることにより、冷凍機・ヒートポンプのそれぞれの成績の良さを表す成績係数$\epsilon$ [1] は次のように定義されている。

$\displaystyle \epsilon_{\rm R} = \frac{\varPhi_{\rm E}}{P}$    
$\displaystyle \epsilon_{\rm H} = \frac{\varPhi_{\rm C}}{P}$    

ここで $\epsilon_{\rm R}$は冷凍機としての成績係数、 $\epsilon_{\rm H}$はヒートポンプとしての成績係数である。

トップページ
この図を含む文章の著作権は椿耕太郎にあり、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に公開する。最新版およびpdf版はhttps://camelllia.netで公開している。