可逆サイクルの熱と仕事と温度

可逆サイクルの熱機関としての効率を明らかにするため、熱源の条件である温度と可逆サイクルの熱と仕事の関係を求める。同じ組み合わせの一定温度の熱源二つで動作する可逆サイクルは、どんな熱機関やヒートポンプでも必ず同じ効率となり構成によらない(4.1 $^{\text{p.\pageref{sec-ReversibleCycleEfficiency}}}$)。すなわち、効率を決める要素は二つの熱源の条件だけであり、熱源と系(サイクル)は熱のやり取りしかなく、熱のやり取りに影響するのは温度のみである。つまり可逆サイクルの効率を決める条件は二つの熱源の温度の組み合わせのみである。よって温度$T_{\rm H}$[℃またはK]の熱源1と温度$T_{\rm L}$[℃またはK]の熱源2( $T_{\rm H} > T_{\rm L}$)で動作する可逆サイクル(図11)の効率$\eta_{可}$は、この二つの熱源の温度($T_{\rm H}$[℃またはK]、$T_{\rm L}$[℃またはK])のみによって表される20。この関係を $f(T_{\rm H}, T_{\rm L})$とおくと効率$\eta_{可}$は次式で表される。

$\displaystyle \eta_{可} = f(T_{\rm H}, T_{\rm L})$ (12)

図 11: 可逆サイクル
\includegraphics[height=50mm]{figures/ReversibleCycleSourceHL.pdf}
効率は仕事と高温熱源からの熱との比(式(1) $^{\text{p.\pageref{eq-EfficiencyEngine}}}$)であるので、上式は次のように変形できる。

$\displaystyle \frac{\vert W_{\rm R}\vert}{\vert Q_{\rm H, R}\vert}$ $\displaystyle = f(T_{\rm H}, T_{\rm L})$ (13)

ここで高温側の熱と低温側の熱の関係を求めるために、熱力学第一法則、次に示す式(3) $^{\text{p.\pageref{eq-CycleEnergyConservation}}}$を使う。

$\displaystyle \vert Q_{\rm H, R} \vert = \vert Q_{\rm L, R} \vert + \vert W_{\rm R} \vert
$

この式を仕事$W_{\rm 可}$を消すように(13)に代入し整理すると次式となる。

$\displaystyle \frac{\vert Q_{\rm L, R}\vert}{\vert Q_{\rm H, R}\vert}$ $\displaystyle = 1 - f(T_{\rm H}, T_{\rm L})$    

このように可逆サイクルの熱の比も温度の関数となる。右辺の関数を $g(T_{\rm H}, T_{\rm L})$とおきなおし次式を得る。

$\displaystyle \frac{ \vert Q_{\rm L, R} \vert }{ \vert Q_{\rm H, R} \vert } = g(T_{\rm H}, T_{\rm L})$ (14)

可逆サイクルの高温熱源からの熱と低温熱源からの熱の大きさの比は二つの熱源の温度のみの関数で表される。



脚注

20
可逆熱サイクルの効率が二つの熱源温度の組み合わせによらず一定であれば、この関数は温度によらない定数となる。
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