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1.4.6 ヒートポンプ

1.4.5節の熱機関(図1.3、p. [*]のサイクル)の過程を逆にした、図1.6のようなサイクルを考える。状態1から状態4では断熱圧縮過程、状態4から状態3では等積冷却過程、状態3から状態2では断熱膨張過程、状態2から状態1では等積加熱過程となる。

図 1.6: ピストンでのサイクル
\includegraphics[width=50mm]{figures/SimpleCycleVolumeHeatpump.eps}

このサイクルでの圧力変化の概略は図1.7のようになる。このサイクルで外部と仕事のやりとりがある過程は体積の変化する状態1から状態4と状態3から状態2である。この過程で、体積の変化は等しいので、仕事の大きさは圧力によって決まり、次の関係が成り立つ。状態1から状態4では仕事をされているので正の値、状態3から状態2では仕事をしているので負の値となる。そのため絶対値をとり大きさを比較する。

$\displaystyle \vert W_{14} \vert > \vert W_{32} \vert$ (1.7)

状態1から状態4ではサイクルが仕事をされており、状態3から状態2では周囲に仕事をしているので、合わせるとサイクル全体としては、周囲から $ \vert W_{14}\vert - \vert W_{32}\vert$ の仕事1.8をされている。熱機関と同様に、状態1から再度状態1に戻った場合、内部エネルギーの変化はゼロなので、

$\displaystyle \Delta U = 0 = Q_{21} + W_{32} + Q_{43} + W_{14}$    
$\displaystyle W_{14} + Q_{43} = - W_{32} - Q_{21}$    

上式と仕事の大きさの関係の式(1.7)から、

$\displaystyle \vert Q_{21} \vert > \vert Q_{43} \vert
$

1.8のように、状態2から状態1では高温の熱源2-1へ熱を渡し(負の値)、状態4から状態3では低温の熱源4-3から熱を受け取っている(正の値)。このように、サイクル全体としては仕事をされ、低温熱源から高温熱源へ熱を伝えており、ヒートポンプとして働いている。

図 1.7: ピストンでのサイクルの圧力変化
\includegraphics[width=100mm]{figures/SimpleCycleVolumeHeatpumpPressure.eps}

図 1.8: ピストンでのサイクルの温度変化
\includegraphics[width=100mm]{figures/SimpleCycleVolumeHeatpumpTemperature.eps}

実際に世の中で使われているヒートポンプとして冷蔵庫やエアコン(クーラー)がある。冷蔵庫やエアコンのサイクルは閉じた系ではないが、同じように考えられる。冷蔵庫やエアコンと図1.6のサイクルの対応は以下のようになっている。

1→4 圧縮され周囲から仕事をされる : 圧縮機(冷蔵庫での騒音の原因)
3→4 冷却され熱が周囲に伝わる : 凝縮器(冷蔵庫では庫外にあり、クーラーでは室外器である)
4→1 膨張し周囲に仕事をする : 膨張弁(仕事は取り出さず、粘性消散1.9で熱に変換されている)
1→2 加熱され熱が周囲から伝わる : 蒸発器(冷蔵庫では庫内を冷やし、クーラーでは室内器で室内を冷やす)

熱機関やヒートポンプの様なサイクルではなく、サイクル全体として周囲と熱や仕事のやりとりがゼロとなる付録B.2(p. [*])のような役立たずのサイクルもありえる。


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