図1.14、図1.15に示すように、熱機関は高温熱源から熱を受け取り低温熱源に熱を与えるため、高温熱源側ではサイクルは高温熱源よりも温度が低く、低温熱源側では低温熱源よりも温度が高くならなくてはならない。また、ヒートポンプでは高温熱源へ熱を与え低温熱源から熱を受け取るため、高温熱源側ではサイクルは高温熱源よりも温度が高く、低温熱源側では低温熱源よりも温度が低くならなくてはならない。
可逆のサイクルでは、まったく同じ過程を逆向きにもできなくてはいけないが、熱源との温度の関係が熱機関とヒートポンプでは異なる。可逆のサイクルとなるためには図1.14の熱機関の線とヒートポンプの線が重ならなくてはいけない。熱源の温度との関係を考えると、高温熱源よりもサイクルの温度が高い場合、熱機関として動作した際に熱源から熱を受け取ることが出来ない(図1.14の過程4→3)。高温熱源よりもサイクルの温度が低い場合、ヒートポンプとして動作した際に熱源に熱を与えることが出来ない(図1.14の過程3→4)。そのため図1.16の過程3→4ようにサイクルが熱源と同じ温度で、熱機関では高温熱源から熱を受け取り、ヒートポンプでは同じ高温熱源へ熱を与える過程を考えなくてはいけない。準静的過程で状態が熱平衡のまま限りなくゆっくり変化すれば、この熱のやりとりが可能である。
この準静的過程は等温変化で熱源とサイクルの温度差がない過程である。このことから、可逆サイクルでは、高温熱源と低温熱源との熱交換する過程は準静等温過程でなくてはならない。温度の変わる過程である図1.16の過程2→3と過程4→1での過程は、熱源と熱のやりとりをすると準静等温過程以外では不可逆となるため、温度が変化する過程では断熱過程である必要がある。そのため過程2→3と過程4→1は可逆断熱過程でなくてはならない。
以上から、二つの熱源で動作する可逆サイクルは準静等温過程→可逆断熱過程→準静等温過程→可逆断熱過程で構成される。このサイクルをカルノーサイクルと呼ぶ。