力学的エネルギー

これまでに示した仕事、運動エネルギー、位置エネルギーを力学的エネルギーと呼ぶ。力学的エネルギーのみ考えた理想的な保存の例を見てみよう。

バネの上でボールが跳ねる、力学的エネルギーが保存される理想的な場合の例を図1.10に示す。ここでは理想的なバネを考え、$l$[m]押された場合に$F=kl$の力がかかるとする($k$[N/m]はばね定数で一定とする)。1.4

図 1.10: 力学的エネルギーの保存
\includegraphics[height=60mm]{figures/BallKineticEnergyReversible.pdf}

1.10<1>ではボールは動いていないので位置エネルギーだけである。力学的エネルギーの合計$E_{合計}$は次式で表される。

$\displaystyle E_{合計} = E_{位1}$ (1.2)

1.10<2>では<1>に比べて位置エネルギーが減少し、減少分だけ運動エネルギーが増えている。力学的エネルギーの合計$E_{合計}$は次のようになる。

$\displaystyle E_{合計} = E_{位2} + E_{運2}$ (1.3)

1.10<3>では速度は0で位置エネルギーの基準をこの位置ととれば、力学的エネルギーの合計$E_{合計}$はバネのエネルギーのみであり、次のように表される。

$\displaystyle E_{合計} = E_{バネ3}$ (1.4)

1.10<4>では速度は<2>の逆向きで同じ大きさとなった時であり、位置エネルギーと運動エネルギーは等しい。

$\displaystyle E_{合計} = E_{位4} + E_{運4} = E_{位2} + E_{運2}$ (1.5)

1.10<5>では<1>とぴったり同じ位置に戻る。

$\displaystyle E_{合計} = E_{位5} = E_{位1}$ (1.6)

力学的エネルギーが保存される理想的な条件では、この<1>から<5>の運動が繰り返される。また、この例では現象は可逆であり、時間を逆に<5>→<4>→<3>→<2>→<1>と動かしたとしても正しい時間の方向<1>→<2>→<3>→<4>→<5>との区別はできない。力学的エネルギーだけ考える場合には熱が関わらないため、時間の方向が定まらない。



脚注

...[N/m]はばね定数で一定とする)。1.4
この時、バネに蓄えられるエネルギーは次式で表される。

$\displaystyle E_{バネ}$ $\displaystyle = \int^l_0 F dl$    
  $\displaystyle = \int^l_0 kl dl$    
  $\displaystyle = \frac{1}{2}kl^2$    

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