一つの熱源

全体で断熱された系の中に、一つの熱源を含む系として、熱力学第二法則トムソンの表現に合う系と反する系でのエントロピーの定義を考える。その中でも一つの熱源では条件3-2(全体で条件2-不可逆で増加が成り立つ)を考える。

熱力学第二法則トムソンの表現に合う系を考える。図2.10のように、全体で断熱された系の中に、単一熱源系(温度$\varTheta$)と仕事を熱に変換するサイクル系(摩擦など簡単に実現できる)の二つの系がある場合は熱力学第二法則トムソンの表現に合う。ここでエントロピーを $Q / \varTheta$として計算をしてみよう。間のサイクルは同じ状態を繰り返しながら動作するのでエントロピーは変化しない2.20。単一熱源系は熱を受け取るので熱は正となり $\Delta S_\mathrm{S}= \vert Q\vert / \varTheta_\mathrm{H}$となる。単一熱源系でエントロピーは増加し、全体での変化量 $\Delta S_\mathrm{total}$は次のようになる。

$\displaystyle \Delta S_\mathrm{total}$ $\displaystyle = \Delta S_\mathrm{cycle} + \Delta S_\mathrm{S}$    
  $\displaystyle = 0 + \frac{\vert Q\vert}{\varTheta_\mathrm{H}}$    
  $\displaystyle > 0$    

熱力学第二法則トムソンの表現にあう「時間の流れが正しい方向に流れている」場合に、全体でエントロピーは増加をしていることがわかる。正しい時間の向きでエントロピーが増加したので、エントロピーとして $Q / \varTheta$を用いることはここの条件では目的にかなっている。
図 2.10: 熱源とトムソンの表現
\includegraphics[width=60mm]{figures/EntropyThomson.pdf}

熱力学第二法則トムソンの表現に反する系を考える。図2.11のように、全体で断熱された系の中に、単一熱源系(温度$\varTheta$)と単一熱源からの熱を仕事に変換する反トムソンサイクルの系の二つの系がある場合を考える。ここでもエントロピーを $Q / \varTheta$として計算をしてみよう。単一熱源系は熱を渡しているので熱は負であり次式のように求められる。

$\displaystyle \Delta S_\mathrm{S}$ $\displaystyle = -\vert Q\vert / \varTheta_\mathrm{H}$    
  $\displaystyle < 0$ (2.18)

そして全体でも減少する。熱力学第二法則トムソンの表現に反する場合は「時間の流れが正しい方向に流れていない」ため、全体でエントロピーが減少する。ここからも $Q / \varTheta$がエントロピーの定義としてふさわしいことがわかる。
図 2.11: 熱源と反トムソンサイクル
\includegraphics[width=60mm]{figures/EntropyAntiThomson.pdf}



脚注

...として計算をしてみよう。間のサイクルは同じ状態を繰り返しながら動作するのでエントロピーは変化しない2.20
ここまでの過程ではサイクルでエントロピーが変化しないことを示すことが出来ないが、エントロピーのイメージをつかんでもらうために、ここではサイクルでのエントロピーは変化しないものとする。ここでのサイクルでは仕事から熱に変換されることで増えるエントロピーと熱源へ熱を伝えることで減るエントロピーが等しい。
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