エントロピーの定義

熱量をその時の絶対温度で割った値でエントロピーの変化量を定義すると、複数の熱源においてはじめに示した条件を満たすことが示せた。しかし、ただ熱量でエントロピーを定義してしまうとエントロピーは状態量とならず、状態変化の過程が明らかな特別な状況でしか不可逆の指標として使えないため広く応用することができない。そこで、エントロピーの定義における熱$Q$を可逆過程の熱$Q_{可}$とするとエントロピーは状態量となり、ある特殊な状態が二つある場合にそれぞれに不可逆の度合いを計算することが出来るようになる。すなわち、どちらからどちらに時間が流れるのかがエントロピーを計算することで求めることが出来るようになり、応用の幅が大きく広がる。このことからエントロピーは可逆過程の熱をその時の絶対温度で割った値として次式(2.24)のように定義する。

$\displaystyle \Delta S \equiv \frac{Q_{可}}{\varTheta}$ (2.23)

上式からエントロピーの単位は[J/K]である。

また、極微小な可逆過程の熱量 $\mathrm{d}Q_{可}$[J]により、次式のようにもエントロピーは定義できる 2.24

$\displaystyle \mathrm{d}S \equiv \frac{\mathrm{d}Q_{可}}{\varTheta}$ (2.24)

可逆過程の熱でエントロピーを定義したが、通常(不可逆過程)の熱のやり取りがあった場合にエントロピーが計算できなくなるわけではない。どのようにエントロピーを計算すれば良いかは付録B.5 $^{\text{p.\pageref{sec-RevIrevHeat}}}$に考え方を示す。



脚注

...[J]により、次式のようにもエントロピーは定義できる 2.24
通常の熱は状態により計算できないため$\delta Q$で極微少量を表したが、可逆過程の熱は状態により決まる値で極微少な変化量として計算できるため$dif$で表す。
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