仕事

SI(国際単位系)のエネルギーの単位J(ジュール)が力の単位N(ニュートン)かける距離の単位m(メートル)で組み立てられている[]ように、エネルギーを「仕事=力×距離」から定義しよう1.1(図1.2)。例えばものを持ち上げれる時には、下に向かう重力に逆らって上向きに力を加わえ、ものに仕事が作用する(図1.3)。床に置いてある荷物を動かすときには、床との摩擦力に対抗する力で荷物を押す必要があり、ここでも仕事が荷物に作用する。

図 1.2: 仕事の定義
\includegraphics[height=60mm]{figures/WorkDeltax.pdf}
図 1.3: 重力に対する仕事
\includegraphics[height=40mm]{figures/WorkDeltaxGravity.pdf}
このように仕事は力を加えてものを動かした際に作用する。 仕事$W$[J]は、力$F$[N]を加えながら移動した距離$\Delta x$[m]により、次式の様に計算される。

$\displaystyle W = F \Delta x
$

加わっている力が移動する間一定の大きさであれば上式で良いが、力の大きさが変化することもあるだろう。その際には次のように微小な移動距離 $\mathrm{d}x$[m]での微小仕事$\delta W$[J]として次のように計算する 1.2

$\displaystyle \delta W = F \mathrm{d}x$ (1.1)

上式を移動した区間(ここでは位置1から位置2)で積分すると、その間に作用した仕事の大きさが計算できる。

$\displaystyle W = \int^2_1 F \mathrm{d}x$    

仕事が作用する際の移動は直線だけでなく、回転による移動でもよい(図1.4)。回転では場所を移動しないため、扇風機やタービンのように同じ場所で仕事の作用を続ける場合に都合が良い。扇風機は空気に対して回転しながら力を加えつづけることで仕事をし、連続的に空気の流れを作っている。

図 1.4: 回転による仕事
\includegraphics[width=60mm]{figures/WorkLabor.pdf}

系に作用する仕事も、式(1.1)での $\mathrm{d}x$の移動の仕方により二通りに分けることができる。一つは系の境界に力が加わり系の形(体積)が変わったことにより直線的に $\mathrm{d}x$移動する仕事であり、ピストン形状の系での体積変化が典型例である(図1.5)。もう一つは系の内部で系の一部に力が加わり回転しながら $\mathrm{d}x$動くことによる仕事であり、例として系の内部にプロペラがあり系の外からプロペラの軸の回転で力を伝え仕事が作用するような系が挙げられる(図1.6)。

図 1.5: 並進運動による仕事
\includegraphics[width=70mm]{.././figures/WorkTranslational.pdf}
図 1.6: 回転運動による仕事
\includegraphics[width=70mm]{.././figures/WorkRotational.pdf}

仕事は、ある物体から別の物体へ力が作用した際に伝わるエネルギーの形態であり、作用した後は力を加えられた物体の保有する運動エネルギーや位置エネルギーとなる。



脚注

...2019NMIJように、エネルギーを「仕事=力×距離」から定義しよう1.1
仕事とは物体に力が加わった際に、物体に作用するエネルギーである
...[J]として次のように計算する 1.2
$F$$x$の関数ではないため微小な仕事は連続関数の微小な変化ではない。不完全微分方程式であるので、"d"ではなく"$\delta$"で微小量を表す。D.1 $^{\text{p.\pageref{sec-WorkInexact}}}$に詳細を示す。
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