5.5 閉じた系の可逆サイクル(カルノーサイクル)での熱と仕事

閉じた系の可逆サイクル(カルノーサイクル)での熱と仕事のやりとりについての詳細を示す。5.4.2節で示したようにカルノーサイクルを熱機関として動作させると以下の過程となる(図5.30)。

準静等温過程 1→2

低温熱源へ熱Q12[J]を渡し周囲から仕事W12[J]をされる

可逆断熱過程 2→3

圧縮され周囲から仕事W23[J]をされる

準静等温過程 3→4

高温熱源から熱Q34[J]を受け取り周囲に仕事W34[J]をする

可逆断熱過程 4→1

膨張して周囲に仕事W41[J]をする

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Figure 5.30: カルノーサイクル

5.5.1 断熱過程

断熱過程での関係を示す。熱力学第一法則の式(1.19)p.1.19から

ΔU=Q+W

である。断熱過程ではQ=0であるので、

ΔU=W

となり、過程の前後の内部エネルギーの差が得られる仕事となる。内部エネルギーは状態によって決まる状態量であるので、過程の前後の状態が分かれば、得られる仕事の大きさが分かる。

5.5.2 準静等温過程

準静等温過程における仕事はヘルムホルツの自由エネルギーによって表される(2.6p.2.6)ため、次式が成り立つ。

W =ΔF
=ΔUΘΔS (5.10)

また、熱力学第一法則の式(1.19)p.1.19から次式の関係が成り立つ。

ΔU=Q+W

上式に先に求めた仕事の式(5.10)を代入すると次のように伝わる熱が求められる。

Q =W+ΔU
=ΘΔS