エントロピー
エントロピーを定義する27。
全体として断熱された系において不可逆の指標となる状態量としたい
28。
すなわち、熱力学第二法則が時間の流れの方向を示したように、時間の流れる方向を数値で表す指標とする。時間が流れる方向の変化に対して断熱された系ではエントロピーが増大するように定義したい
29。
そこで次の三つの条件が成り立つようにエントロピーを定義する(全体として断熱されていることが大前提である)。
- 断熱された一つの系での"可逆"の変化では(仕事の作用があっても)、どちらに時間が流れてもよいので、エントロピーは変化しない。
- 断熱された一つの系の状態が変化した際、不可逆の変化であれば時間の経過でエントロピーが増加する。
- 全体は断熱された内部に複数の系が存在し、それぞれの系の間では熱のやりとりがある場合でも全体では条件1(条件3-1)と条件2(条件3-2)が成り立つ。
条件1で示したように断熱された系が可逆変化した場合、エントロピーは変化しないように定義したい。可逆断熱変化でのエントロピーの変化を
とすると条件1は次式で表される。
条件2の不可逆の変化で増加する性質を考える。時間の流れる方向での変化でエントロピーが増加し、逆の時間の流れだと減少するようにする。温度差がある物体間で熱が伝わる場合や、熱が発生する場合は現象は不可逆となる
30(2.3節
)。
そこで、熱を受け取る場合や発熱する場合にエントロピーが増えるように定義する。これまでに熱を受け取ったり発熱をする場合には熱は正と定義しているので、それに対応するエントロピーの変化量も正とするように条件2は次のように表す。
条件3の全体は断熱された内部に複数の系があり内部で熱のやり取りのある系として、一つの熱源とサイクルを含む系、二つの熱源とサイクルを含む系、複数の熱源とサイクルを含む系について、条件1(条件3-1)、条件2(条件3-2)が成り立つかそれぞれ考える。
4.4節
で可逆サイクルの関係で出てきた
が上の式(25)と式(26)の関係を満たすため、エントロピーの定義の候補として、全体として断熱された中に熱源とサイクルがある場合に条件を満たすか検討をしていく。
脚注
- 27
- 以下のエントロピーの定義の導出はイメージのしやすさを優先しているため、厳密な考え方については他の熱力学の教科書[2][3]等で確認するとよい。
- 28
- 作用された系、作用した系の両方の変化を含めて可逆・不可逆を考える。
- 29
- 複雑な現象で、次にどちらの方向に現象が動いていくのかがすぐには分からない場合に、どちらに動くか判断する指標となる。
- 30
- 条件2では断熱された一つの系を考えているので、発熱のみで熱の伝わりを考慮する必要はないが、条件3のために熱の伝わりも考える。
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