可逆サイクルの効率は等しい(クラウジウスの表現)

可逆サイクルAと可逆サイクルBを並べて同じ二つの熱源間で動作させる(図B.5-左)。次式のように可逆サイクルAの熱機関としての効率 $\eta_\mathrm{A}$[-]が、可逆サイクルBの熱機関としての効率 $\eta_\mathrm{B}$[-]よりも高いと仮定する。

$\displaystyle \eta_\mathrm{A} > \eta_\mathrm{B}$ (B.1)

図 B.5: 可逆サイクルの比較
\includegraphics[height=70mm]{figures/RevRevClausius.pdf}
効率の高い可逆サイクルAを熱機関として、可逆サイクルBをヒートポンプとして、仕事の大きさが同じになるよう( $\vert W_\mathrm{A} \vert = \vert W_\mathrm{B} \vert $)に動作させB.2る(図B.5-右)。 熱機関の効率の式(1.20) $^{\text{p.\pageref{eq-EfficiencyEngine}}}$と効率の関係の式(B.1) $^{\text{p.\pageref{eq-InequalityRevCycleEfficiency}}}$から

$\displaystyle \frac{ \vert W_\mathrm{A} \vert }{ \vert Q_\mathrm{H, A} \vert } > \frac{ \vert W_\mathrm{B} \vert }{ \vert Q_\mathrm{H, B} \vert }
$

ここで仕事が同じとなるように動作させている( $\vert W_\mathrm{A} \vert = \vert W_\mathrm{B} \vert $)ので、次式が成り立つ。

$\displaystyle \vert Q_\mathrm{H, A} \vert < \vert Q_\mathrm{H, B} \vert$ (B.2)

上式と熱機関におけるエネルギー保存の式(1.22) $^{\text{p.\pageref{eq-CycleEnergyConservation}}}$とヒートポンプにおけるエネルギー保存の式(1.26) $^{\text{p.\pageref{eq-CycleEnergyConservationPump}}}$より、

$\displaystyle \vert Q_\mathrm{L,A} \vert + \vert W_\mathrm{A} \vert > \vert Q_\mathrm{L,B} \vert - \vert W_\mathrm{B} \vert
$

仕事の大きさが同じになるように動作させている( $\vert W_\mathrm{A} \vert = \vert W_\mathrm{B} \vert $)ので、次の関係が成り立つ。

$\displaystyle \vert Q_\mathrm{L,A} \vert$ $\displaystyle < \vert Q_\mathrm{L,B} \vert$ (B.3)

B.5の右側の図のオレンジの点線のように二つのサイクルを大きな一つの系として考えると、高温熱源への熱は式(B.2)より系から高温熱源へ向かっている(図B.5右の右側でオレンジの点線から高温熱源に向かっている赤の矢印)。また、低温熱源からの熱は式(B.3)より系が受け取っている(図2.6右の下側でオレンジの点線へ入っている赤の矢印)。二つのサイクルを含めた大きな系で見ると、系が低温熱源から他に作用を及ぼさず高温熱源に熱が伝わっているため、熱力学第二法則のクラウジウスの表現(2.2 $^{\text{p.\pageref{sec-2ndLawStatements}}}$)に反する。よって、ある可逆サイクルの効率が他の可逆サイクルの効率よりも高くなることはありえない。



脚注

...)に動作させB.2
それぞれの可逆サイクルの仕事の大きさが違う場合は、同じ可逆サイクルを複数個まとめて動作させて、それぞれの数を調整し、総計で同じ仕事となるように調整する。
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